CTやMRIなど脳画像処理技術の登場する前は献体によって研究がなされていました。
死に至るほどの重度視床出血を対象としていたわけです。
古典的な視床出血の特徴として
- 感覚障害が運動障害よりも優位
- 眼球運動障害
- 言語障害
が挙げられています。
現在では脳画像技術の進歩により視床出血生存者の小出血画像所見が得られるようになりました。また、視床の各領域の血管支配が同定されるようになり臨床症状と画像所見の関連が示されるようになりました。
今回は、視床出血の損傷領域別の特徴を勉強していきたいと思います。
目次
視床出血について
視床の血管
- 前核:視床灰白隆起動脈tubelo thalamic arteries (記憶・情動)
- 内側核群:視床穿通枝動脈thalamo perforant arteries (運動前野ー記憶・行動)(髄板内核ー覚醒・意識)
- 外側核群(腹側核):視床膝状体動脈thalamo geniculate arteries (体性感覚)
- 外側核群(背側核):後脈絡叢動脈posterior choroidal arteries (多種感覚統合)
視床の核や機能・血管の名称は混乱が多いようです。
私には名称が統一されていないのか、細い血管が沢山存在しているのかはわかりません。
視床の核
視床は内髄板を境にして
- 外側核群:背側核をLD・LP 腹側核をVA・VL(VPL・VPM)
- 内側核群:DM核
- 前核:A核(VA核)
に分けられ、さらに後方には視床枕を含む神経核群の集合体となっています。
視床の損傷領域別の特徴
前方を中心とした出血
視床灰白隆起動脈は後交通動脈から起始して、乳頭体の前方で灰白隆起から穿通して視床前方を灌流する。
皮質ー基底核ループに関与
VA核は運動ループ・眼球運動ループ・認知ループに関与しており運動前野・補足運動の障害を呈する
A核は乳頭体ー帯状回に関与し意識障害・情動障害・記憶障害を呈する
後内側を中心とした出血
視床穿通枝動脈は後交通動脈と後大脳動脈の吻合前から起始して赤核の上端、第3脳室壁に沿って視床内側を灌流する。
記憶障害、眼球運動障害あり。中脳への血腫拡大で予後不良。
第3脳室へ穿破すると重篤な水頭症を合併する。
皮質ー基底核ループに関与
DM核は行動の計画や動機づけに関与しており、急性期の行動異常を呈する場合がある
皮質ー小脳ループに関与
DM核は小脳脚を通じて大脳皮質前頭連合野に投射する
このループの障害により小脳性認知情動症候群(CCAS:cerebellar cognitive affective syndrome)を呈する場合がある
後外側を中心とした出血
視床膝状体動脈は、後大脳動脈から起始して視床外側域を灌流する。
視床膝状体動脈は、視床を灌流する血管のうち最も出血の多い血管とされている。
損傷半球によって無視・失語あり。
体性感覚の主要な中継核、内包まで血腫拡がると運動障害。
Dejerine Roussy視床症候群
- 表在核鈍麻(過敏)と深部感覚障害
- 軽い運動麻痺
- 軽い運動失調と立体覚失認
- 激しい疼痛
- 不随意運動
を特徴としている。いわゆる視床症候群を発症する場合がある。
背側を中心とした出血
後脈絡叢動脈は、視床枕や背外側核(LD核)を灌流する。
臨床的特徴はなく、多彩な症状を呈する。
LD・LP核は頭頂連合野との関係があり、体性感覚と視覚情報を統合し身体図式の形成を行なっていると考えられている。
視覚や体性感覚、平衡感覚などの感覚統合が上手に行えないと姿勢定位障害を呈し、身体を垂直に保つことが困難となる。
まとめ
視床出血を支配血管別に症状をまとめました。
視床の核それぞれに対応した血管があるわけではないので、主要な4つの血管からの出血でも損傷される核が異なれば症状も変わってくる。
まずは血管、その後核を機能を勉強して、症状との関連を覚えていくのが良さそうだと感じました。
視床出血を勉強していく際に参考にしている論文。視床出血