バランス検査は、単に外乱を加えたときの身体の姿勢反応(立ち直り・平衡反応など)でバランスの良し悪しを決める事の他にもあります。
動作の安定性や効率性という視点や動作の目的や環境とのかかわりの中で感覚・運動調節、筋・骨関節機能、姿勢アライメントなどを含んだ相互作用の結果として捉えていく考え方となっています。

バランスの捉え方
現在ではバランスを定義する際、「バランス」と「バランス能力」とに分けて考えるようになっています。
バランスとは:動作の安定性
バランス能力とは:バランスを保つために必要な身体機能
バランス能力は動作を実行した時に、その動作が安定して実行できているか観察する事で確認できます。
姿勢調節とは
動作を実行するには姿勢の調節が必要となります。
姿勢調節には、姿勢の定位と姿勢の安定性の2つの側面がある。
姿勢の定位:課題の実行に適した身体の向きや身体部位の位置関係を保つ機能
姿勢の安定性:バランスと同義
動作を安全に効率よく実行するためには姿勢の定位とともにバランスが必要となります。
バランスとは
バランスとは
安定性と姿勢調節の概念を含んだ考え方であり「一定の支持基底面内に身体重心を収める事」「姿勢調節にかかわる多くの要素により遂行されるもの」を「バランス」と呼んでいると考えられます。
「バランス」の良し悪しとは「支持基底面内に重心を収めておく事」のできる確率が高いか低いか、と同じ表現であると示されています。
バランス能力とは
「姿勢保持や動作において、支持基底面と身体重心の関係を時間的・空間的に適切に保ち、目的とする課題を安全に効率よく実行させる機能」
姿勢定位をする際に、身体全体の安定性を保つ機能でありバランス能力を構成する機能的要素がシステムとして協調して働くことで発揮される複合的な機能となります。
バランス能力を構成する身体の機能的要素の他に、開眼や閉眼などによる運動課題への影響や地面が平地か砂場かによる環境条件が運動に及ぼす影響も加味される。
バランスとはバランス能力・動作課題・動作環境の関連の中で決定されると考えられています。
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まとめ
バランスという用語は普段よく使っていますが、神経系・筋骨格系などのシステムが関わってきます。
バランスに関わるシステムの定義がなされていないので、バランスの概念が複雑になっています。
- バランスの定義を考える時は「バランス」と「バランス能力を」分けて考えること
- バランスは安定性、支持基底面から重心が外れる確率が低い状態
- バランス能力は「姿勢調節」、目的とする動作を効率的に安定的に協調して運動・定位する能力
- バランスを構成する要素は支持基底面や予測的姿勢制御などのシステムが関わること
について考えてきました。
運動機能や認知機能、課題の難易度、課題の環境設定などの相互作用でバランスが結果として変化していくということを頭に入れておきたいと思います。