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基底核による運動調節について

              

大脳基底核の機能は随意運動の調節であり、感覚や情動も含めた運動のパターンに影響を与える情報を処理しています。

複数の神経核やループ回路を形成しているのが特徴です。

解剖学的特徴について

  • 線条体(尾状核・被殻)、淡蒼球、視床下核、黒質の4つの核で構成される
  • 尾状核頭部と被殻は前下方で融合しており尾状核頭部の下部、被殻の下部および側坐核などをあわせて腹側線条体と呼ぶ
  • 淡蒼球内節と黒質網様部の細胞の形態はよく似ており同じ機能を持つ
  • 淡蒼球内節のうち前交連より腹側にある領域を腹側淡蒼球とよび、腹側線条体との間に神経連絡がある

今回は、大脳基底核の運動調節機能について、大脳皮質と大脳基底核連関を通して考えていきたいと思います。

基底核による運動調節について

大脳基底核を構成する核

大脳基底核を構成する4つの神経核

  1. 線条体(striatum):尾状核(caudate nucleus)、被殻(putamen)、腹側線条体(ventral striatum)
  2. 淡蒼球(globus pallidus):淡蒼球外節(external segment of the globus pallidus,GPe)、淡蒼球内節(internal segment of the globus pallidus,GPi)
  3. 視床下核(subthalamic nucleus,STN)
  4. 黒質(substantia nigra):黒質網様部(substantia nigra pars reticulata,SNr)、黒質緻密部(substantia nigra pars compacta,SNc)

大脳基底核のループ

 

大脳皮質ー線条体・視床下核ー(介在部・修飾部)ー淡蒼球内節・黒質網様部ー視床

大脳皮質からは運動の意思が線条体に伝えられる。

線条体からは淡蒼球内節と黒質に出力されたのちに視床に入る。

視床から運動前野や頭頂葉に出力され、情報伝達ループが形成される。

基底核ループの経路4つ

大脳基底核へは大脳皮質のさまざまな領野からの入力があり、機能的に独立したループが形成され、並列的な情報処理が行われている。

  1. 運動ループ・・・四肢および体幹の骨格筋運動の制御
  2. 眼球運動ループ・・・衝動性眼球運動
  3. 認知ループ・・・認知と行動の計画
  4. 辺縁系ループ・・・動機付け

内部回路3つ

各基底核ループの入り口と出口を結ぶ内部回路には、直接路と間接路がある。

大脳皮質からの入力が出力部に直接伝達される経路をハイパー直接路という。

  1. 直接路・・・大脳皮質を興奮    経路: 大脳皮質⇒線条体→淡蒼球内節・黒質網様部→視床⇒大脳皮質「直接路は出力部を抑制し、その結果視床ニューロンを脱抑制して興奮させ、大脳皮質も興奮させる」
  2. 間接路・・・大脳皮質を抑制  経路:大脳皮質⇒線条体→淡蒼球外節→床下核⇒視床下核淡蒼球内節・黒質網様部→視床⇒大脳皮質「間接路は視床下核ニューロンを脱抑制によって興奮させ、その結果出力部のニューロンが興奮して視床、大脳皮質を抑制する」
  3. ハイパー直接路・・・視床と大脳皮質を抑制 経路:大脳皮質⇒視床下核⇒淡蒼球内節・黒質網様体部→視床⇒大脳皮質「ハイパー直接路も視床下核ニューロンを興奮させるので、結果的に間接路を同じく出力部のニューロンが興奮し、視床と大脳皮質を抑制する」

基底核運動系ループの役割

動作を行う時はハイパー直接路の興奮性の信号が出力部に到達し大脳皮質の広い領域が抑制される。

次に直接路の抑制性の信号が到達し、大脳皮質の限局した領域が脱抑制によって興奮し運動が出現する。

最後に間接路の興奮性の信号が大脳皮質の広い領域を抑制し運動が消失する。

運動野からの運動指令が適切な強さとタイミングで出されるよう調節することで意思通りにスムースに運動できるようにしていると考えられている。

不随意運動野や無動

大脳基底核損傷によって基底核の各機能ループの機能不全と内部回路の機能不全により、大脳皮質の興奮性のバランスが崩れ運動障害や情動障害が出現する。

運動系ループでは、基底核からの出力が大脳皮質を興奮させることができなくなると無動や寡動などの症状が出現する。

また、大脳皮質の興奮を抑制することができなくなると、ジストニアなどの不随意運動が出現すると考えられている。

まとめ

大脳基底核は、運動野からの運動指令が適切な強さとタイミングで出力されるよう調整することである。

意図通りのスムースな運動ができるのは基底核の運動調節機能の役割によってなされていると考えられている。

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