ノート

共同偏視が起こる機序を考える

              

共同偏視とは両眼が同じ方向に偏って位置する状態です。

脳血管疾患でしばしば遭遇し、被殻出血では病巣側を向く橋出血では病巣と反対側を向くとされています。

側方視や水平眼球運動の勉強をしていくとPPRFやMLFといった用語が出てきて複雑で覚えづらいと思います。

この現象がなぜ起こるのかを側方注視麻痺(水平眼球運動障害)の機序と関連づけて勉強すると覚えやすいと思いました。

今回は共同偏視と側方視の関連する神経経路をまとめて覚えていこうと思います。

共同偏視に関わる神経・筋

手足を動かす指令は脳から手足を動かす筋肉まで下行していきます。

これと同じように眼球運動も脳から指令が出ています。

  • 手足を動かす指令は脳から目的の筋肉(骨格筋)まで伝達
  • 目を向ける方向の指令は脳から目的の筋肉(外眼筋)まで伝達

側方注視の指令は大脳の前頭眼野(8野)

眼球を側方に動かす筋肉は外眼筋のうち内直筋と外直筋が関与

具体的には

前頭眼野(8野)からの見る方向の指令を下位中枢であるPPRFに送ります。

PPRFから両眼へ見る方向への外眼筋に指令を伝達させるので両眼が同じ方向に向くようになっています。

ここで

PPRF:傍正中橋網様体

MLF:内側縦束

が関わってくるので神経経路が複雑になってきます。

側方視の経路①

側方視の神経経路について考えてみます。

前頭眼野からの指令は橋にあるPPRFという下位眼球運動中枢まで下行します。

途中内包を通り

  1. 前頭眼野
  2. 内包膝部
  3. (交叉)
  4. PPRF(反対側)

PPRFから外眼筋へ指令がゆき両眼が(PPRFと同側へ)共同して側方を向きます。

  • PPRFから外転神経核(Ⅵ神経)より同側外直筋に指令
  • PPRFから対側MLFを経由し反対側動眼神経核(Ⅲ神経)を介し内直筋に指令

大脳半球の広範囲病変や被殻出血などはPPRFのある橋より上部(交叉する前)なので病巣側と反対側の眼球運動が障害されます。

病巣側と反対側へ眼球運動ができないので左右のバランスが崩れ正中を保持できなくなった眼球は運動が障害されていない病巣側へ偏位してしまいます。

側方注視の経路②

前頭眼野からの指令はPPRFという左右水平方向の共同運動を行う中枢に伝わります。

  • PPRFから外転神経核を経由し外転神経より同側外直筋へ
  • PPRFから対側MLFを経由し(反対側)動眼神経より対側内直筋へ

両側外眼筋への共同指令によって、内直筋と外直筋が連動し両眼で左右の注視が行えます。

PPRFが障害されると障害された側の眼球運動ができなくなります。

両眼は左右のバランスが崩れ正中を保持できなくなった眼球は障害されていないPPRF側に偏位してしまいます。(病巣と反対側に偏位)

まとめ

  • 共同偏視や水平眼球運動障害は眼球運動に関わる神経経路の障害によって眼球運動ができない状態
  • 通常、左右方向の外眼筋はバランスをとって正中を保持している
  • 側方注視麻痺となると麻痺側の外眼筋が機能しないため左右のバランスが崩れて正中から偏位してしまう
  • 動眼神経核は中脳被蓋(中脳水道の底部)外転神経核は橋被蓋(第4脳室の底部)に位置し上下に長く投射しているので障害されやすい

以上、自分なりに側方視に関わる神経経路をまとめて共同偏視を考察しました。

 

参考図書

脳の機能解剖と画像診断

臨床のための神経機能解剖学

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