ニコチンの神経作用には依存形成があり、タバコをやめられない一つの原因となっているようです。
ニコチン受容体は本来、生体内ではニコチン性アセチルコリン受容体として存在し、運動をはじめとした様々な神経伝達物質を受けています。
本来、運動指令を受けるためのアセチルコリン受容体がニコチンも受容できるという事が依存につながりやすい原因となっているようです。
今回は、健康増進にもつながる運動の脳内報酬系を考えていくと禁煙への動機づけにもつながらないか?という考えをまとめました。
禁煙には運動が効果的と考える理由【ニコチン依存からの解放】
ニコチン依存とは
ニコチン依存とは、喫煙によって肺から体内へニコチンが取り込まれ脳内の腹側被蓋野にあるニコチン性アセチルコリン受容体に結合します。ニコチンが受容体と結合すると、脳内報酬系回路によって側坐核から大量のドーパミンが放出されます。ドーパミンは快楽に関わる脳内神経伝達物質であり、この快楽を繰り返すと依存形成につながっていきます。
e-ヘルスネット 厚生労働省 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-052.html
脳内報酬系とは
脳内報酬系とは中脳腹側被蓋野から投射され、正の強化、快情動、動機づけに関わる情動回路を動かすドパミンを分泌します。
タバコを吸う→頭がスッキリするなどの快情報は記憶され脳内では、すっきりしたい時はタバコを吸うという動機づけが形成されてゆきます。
ニコチン性アセチルコリン受容体
脳内報酬系である中脳腹側被蓋野は、本来ニコチンのみ受容する訳ではありません。
アセチルコリン受容体は、ムスカリン性受容体とニコチン性受容体とがあります。
アセチルコリンとは、神経伝達物質であり運動神経の神経筋接合部や交感神経の節前線維などのシナプスで放出されます。
ニコチン性アセチルコリン受容体は本来、コリン作動性神経でありアセチルコリンによって作動します。
ところが、ニコチンでも作動してしまうことによって脳内報酬系と強く結びついてしまいます。
運動してアセチルコリンを放出することよりも、動かなくてもタバコを吸うことによってニコチンを取り込んだほうが簡単に快楽を得られるという事を学習してしまう事が依存形成につながるようです。
-
-
タバコで頭がさえる?その理由【ニコチンの神経作用について】
タバコの健康被害が注目されています。タバコの値上がりや喫煙所の減少など禁煙が進められています。そのような中、なかなか禁煙できないで ...
続きを見る
行動変容
運動神経はアセチルコリン作動性の神経線維であり、アセチルコリンを神経からを筋へ伝達する事で筋収縮が起こり運動を行っています。運動する事でアセチルコリンを分泌させれば、脳内報酬系に作用し運動した事での快刺激を得ることにつながっていくことにつながらないかと考えています。
今までタバコを吸ってニコチンで快刺激を得ていた習慣を、運動習慣に切り替える事で同じ快刺激を得るよう動機づけしていきます。
動機づけに関わる脳内回路は報酬系回路と呼ばれていますが、大脳皮質ー基底核ー視床ループの関与も指摘されています。
-
-
基底核による運動調節について
大脳基底核の機能は随意運動の調節であり、感覚や情動も含めた運動のパターンに影響を与える情報を処理しています。 複数の神経核やループ ...
続きを見る
脳内報酬系を活性化するために
禁煙をするためにはまず、自身の脳内報酬系は歪んでいるという事を自覚しなければなりません。
快刺激にはドーパミンというホルモンが放出されますが、本来はアセチルコリンが分泌されて起こる現象をニコチンによって奪われているという歪みを修正していきます。
運動をする事でタバコに代わってスッキリするという体験を得られれば、少しづつ自分の習慣が代わってくるかもしれません。