リハビリテーション場面では筋・骨格に触れることが多く「~筋」の筋力低下や「~筋」の痛みなど、筋肉の状態を把握する作業はよく行われます。
この筋肉の状態を表す場合を考えてみます。
- 筋力・・・MMTなど
- 痛み・・・NRSなど
これらは筋力や筋の痛みを量的指標で表現しています。一方で
- 筋スパズム・・・筋の緊張が高い・張りがあるなど
- 筋硬結・・・筋に硬い部分があるなど
これらも筋の状態を表現しようとしていますが量的な指標ではなく、筋の触った感じを表現しています。
正常筋では触知されない筋の病的状態を表現した用語で、用語を使い分ける事で触診した時に筋の状態をセラピスト間で共有しやすい為、広く使われるようになったのではないかと考えられているようです。


今回は筋スパズムについて筋硬結の違いとともに現在の考えをまとめていきます。
目次
筋スパズムについて(筋硬結との違い)
筋スパズムの原因
筋・靭帯などの関節構成体の損傷による痛みは脊髄反射を介して筋スパズムを生じさせる事(筋紡錘の過活動)が想定されている。
具体的には外傷・疼痛・炎症など組織の損傷から、α運動ニューロンの興奮性が増大し、当該筋の筋緊張を亢進させる。
この状態を筋スパズムと表現されている。
外傷など組織損傷によって筋紡錘の活動は亢進しやすい状況にあるようです。
局所に筋スパズムがあると周辺組織の血管を圧迫し循環不全を引き起こし更に疼痛を悪化させうる。
組織の損傷ー疼痛ー伸張反射の亢進ー筋スパズムー周辺組織の循環不全ー疼痛悪化という悪循環も想定されている。
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筋紡錘の機能と筋緊張について
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筋硬結の原因
筋収縮はアクチンとミオシンフィラメントの滑走によって行われています。これが筋に対して過負荷であったりすると筋障害を起こし、筋の収縮ー弛緩のバランスが崩れ、アクチン・ミオシンフィラメントの滑走が膠着してしまいます。これによって筋の収縮が解除できない状態の事を筋硬結と表現しています。
筋硬結には
- 組織周辺の循環障害によって引き起こされる筋の状態
- 筋障害によって局所的に筋収縮がとれない状態
筋硬結と筋スパズムを引き起こす原因は混在した状態であり、筋スパズムと筋硬結は混同されやすくなっているようです。
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筋スパズムと筋硬結の併存
筋スパズムによって局所の循環不全を生じ筋硬化する。また、筋短縮により可動域制限を引き起こす。
疼痛閾値が低下している場合、発痛物質が産生されることにより局所の循環不全を助長する可能性がある。
局所の循環不全によって筋が硬くなる、スパズムのある筋には筋硬結部位が存在する可能性が考えられます。
筋スパズム・筋硬結の起こりうる機序
筋収縮のメカニズムは、筋小胞体よりカルシウムイオンが放出され、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの滑走によって行われます。筋の損傷によって神経伝達物質であるアセチルコリンの持続的な漏出が起こると、興奮収縮連関によって筋の収縮が持続的に起こります。局所の循環障害によってATPを供給できず筋の収縮は解除できない状態が続きます。

筋スパズム・筋硬結の治療
筋スパズムの機序から、痛み、局所の循環障害を改善させることで筋紡錘の過活動を抑制していくことが効果的と考えています。
痛みの改善や局所の循環障害は、脊髄反射や交感神経過反射を改善させます。
ホットパッックやTENSなど筋リラクセーション効果のある物理療法を選択
筋のリラクセーションなども効果的、短縮した筋へはしっかりと筋長を確保し癒着や拘縮を防ぐ
スパズムや筋硬結のある筋はATPが枯渇しており脱水状態が想定される、治療後には水分をしっかり取る
まとめ
- 筋スパズムは筋緊張の亢進状態という、筋の状態を示している。
- 筋硬結は筋収縮が解除できないという、筋の状態を示している。
今回は、はっきりと筋スパズムと筋硬結の病態の違いを解説できていません。
また、アプローチ方法も同一の方法で効果があると思われます。
まずは、痛みや機能不全などによって困っている事から改善していくことが必要だと考えます。