ストレッチはスポーツ前の準備運動として、障害予防に効果的であるとされています。
また、個別の筋リラクセーションを目的としてストレッチや持続的伸張を用いたりします。
なぜ持続的伸張には、筋リラクセーション効果があるのか?
効果的にストレッチングを行うに気をつけたいポイントは?
今回は、よく使われるストレッチングの原理と効果的に行うためのポイントを調べていきます。
ストレッチを行う際気をつけたいポイント
筋の柔軟性を改善させる目的でストレッチングを行うことは多いと思います。
筋の柔軟性とは神経生理学的に捉えると、筋の緊張を低下させ伸張反射を抑制させる事と捉えられると思います。
筋の緊張をモニターする神経機構について考えながら、ストレッチの原理と気をつけたいポイントを考えてみたいと思います。
筋の緊張を感知するゴルジ腱器官
ゴルジ腱器官は、筋肉と腱との間にある筋腱移行部に存在します。ストレッチのように筋を持続的に伸張させると筋が緊張します。
筋の緊張に対して興奮するのがゴルジ腱器官です。(筋の張力に応じて興奮の程度が変化)
ゴルジ腱器官はⅠb神経線維に支配されており、ゴルジ腱器官の興奮はⅠb神経線維を通って脊髄内に入り、同筋を支配する脊髄前角のα運動ニューロンを抑制します。
α運動ニューロンの抑制が筋の緊張を抑え、筋リラクセーションにつながると考えられます。
ゴルジ腱器官と筋紡錘の違い
骨格筋が引き伸ばされると、筋紡錘もゴルジ腱器官も興奮します。
筋紡錘 筋の伸張によって興奮しⅠa求心線維のインパルス上昇(錘外筋繊維に並列に配置)
ゴルジ腱器官 筋の緊張(収縮)によって興奮しⅠb求心線維のインパルス上昇(錘外筋繊維に直列に配置)
骨格筋がさらに引き伸ばされ緊張すると筋紡錘からの求心線維のインパルスは減少するが、ゴルジ腱器官の興奮は持続したままの状態が続きます。
骨格筋が強く引き伸ばされたり、強く緊張(収縮)した場合に、ゴルジ腱器官からⅠb神経線維へのインパルスが出力され、同筋を支配するα運動ニューロンを抑制することでリラクセーション効果をもたらすと考えられています。
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筋紡錘の機能と筋緊張について
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まとめ
ゴルジ腱器官は、筋が伸張された状態からさらに引き伸ばされたり、緊張(収縮)したりした場合に興奮します。
個別の筋を伸張した状態から徒手にてさらに伸張を持続的に加えることでゴルジ腱器官からの興奮をⅠb求心線維が脊髄前角まで伝え同筋のα運動ニューロンを抑制することで筋の緊張を抑えようとする場合や静的ストレッチングは持続的にゆっくりとじわーっと筋を伸ばすイメージが重要になってくると思われます。

鈴木敏和ほか IDストレッチング 三輪書店