頭部外傷でしばしば遭遇する疾患です。
スマホや読書がしづらい、階段の降りが怖いといった訴えを聞く事が多いです。
目がぼやけるので疲れたり外傷なので頭痛を訴えることも多いです。
今回は外眼筋の走行を考えながら複視のメカニズムを考えていきます。
骨格筋は解剖学的起始停止で作用する運動が決められていますが、時に作用が転換することもあります。
外眼筋でも同じ現象が起きているので今回整理しました。
最後に滑車神経麻痺による複視についてメカニズムを考えていきます。
目次
解剖学的起始停止からみた外眼筋の作用
眼球運動が起こっていない状態で筋の走行から作用する運動を定義する場合(上図)
上下直筋と上下斜筋は全方向に作用する
- 直筋-内転
- 斜筋-外転
- 上直斜筋-内旋
- 下直斜筋-外旋
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眼球運動 下斜筋の作用をイメージするのが難しい
複視など目がぼやけると言った症状を訴える場合に斜視や眼球運動障害を疑います。 上下にぼやける場合(複視)を上下斜視と呼ぶようです。 ...
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側方注視位では作用の転換が起こる
表:内方視・外方視による作用の転換
図:水平面
内方視:
- 斜筋の走行と眼軸が近づくので上転・下転の作用となる
- 直筋の走行と眼軸が交差するので内旋・外旋の作用となる
外方視:
- 斜筋の走行と眼軸が交差するので内旋・外旋の作用となる
- 直筋の走行と眼軸が近づくので上転・下転の作用となる
複視と作用筋の関係
内方視・外方視による複視の程度から原因筋を推定する事ができる
滑車神経麻痺
滑車神経は上斜筋を支配しているので上斜筋の作用が障害されます
上斜筋の障害によって起こる症状
眼球の位置
正面から眼球の位置を比べると患側で上に偏位します(上斜位)
- 上転に作用:上直筋と下斜筋
- 下転に作用:下直筋と
上斜筋(❌)
下方にはたらく筋が減るので上下のバランスが崩れるのでしょう
複視:内方視で悪化・外方視で軽減
上斜筋は内方視で下転の作用となり、外方視で内旋の作用となります。
なので、外方視では上斜位(複視)が軽減します。
複視:頭位傾斜で変化
内旋に作用:上直筋と上斜筋
頭部を傾けると反対方向に眼球は回旋します。
頭部を左に傾斜したとき左眼球は内旋します。この時、左上斜筋の作用が失われていると同じ内旋に作用する上直筋に引かれ眼球は上斜位をとりやすくなります。
- 患側に頭位傾斜した時複視は増悪
- 健側に頭位傾斜した時複視は軽減
まとめ
滑車神経麻痺による上斜筋の作用不全は下内方(鼻側の下方)がぼやけるといった症状が出現する。
下転と内旋が苦手となるので代償的に頭位を健側に傾け苦手な下方を向かないように上目遣いをする戦略をとりやすい。
参考図書:臨床のための神経機能解剖学