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半側空間無視

              

半側空間無視は脳卒中の損傷半球と対側の視空間に起こる症状として観察されます。

最近では注意ネットワークの障害として考えられることが主流なようです。

注意障害は全般性注意と方向性注意に分けて考えられますが、半側空間無視は方向性注意に関わるようです。

全般性注意

  1. 持続性注意
  2. 選択的注意
  3. 転換性注意
  4. 分配性注意(容量)
  5. 注意の実行制御(モニタリング力)

方向性注意 半側空間無視

今回は半側空間無視を視空間情報処理ネットワークの障害という点から勉強していきます。

注意ネットワーク

方向性注意に関与する空間定位ネットワークとして背側経路と腹側経路が想定されています。

  • 背側注意ネットワーク:トップダウン注意 (能動的・内発的注意)
  • 腹側注意ネットワーク:ボトムアップ注意(受動的・外発的注意)

目的を持って作業や動作を行っているときはトップダウン注意が、突然の刺激に対してはボトムアップ注意が働きます。

これら2つの注意ネットワークは相互に抑制し合っており、状況に合わせた注意が働くよう調整されています。

全般性注意と方向性注意の関係性

脳幹網様体は覚醒・警戒ネットワークとして作動しています。

青斑核からのノルアドレナリンが関与しており全般性注意として意識レベルを調節します。

帯状回では情動や発動性に関わり、作業課題や運動課題の維持・遂行に関与します。

前頭ー頭頂領域では作業課題や運動課題の開始や切り替えなど調節します。

方向性注意にはベースとなる意識や覚醒(持続性注意)が保証されていることが左右空間への注意の選択に必要となってきます。

 

半側空間無視の病態

半側空間無視の評価には行動性無視検査(behavioural inattention test;BIT)が使用されています。

無視空間の参照枠から2つのタイプが考えられています。

  1. 自己中心座標:抹消課題(再抹消/反復性マーキングする場合は重症)
  2. 物体中心座標:模写課題(エラーがある場合は重症例が多い)

半側空間無視の発現する空間について

  • 身体外部空間:左側にぶつかる
  • 身体近傍空間:食事
  • 身体空間(体性感覚空間):左半身の忘れ、更衣動作
  • 表象空間:イメージでも無視

半側空間無視の評価では机上で目的を持った課題を遂行している時の評価であり、能動的/トップダウン注意が主に働いています。

一方、日常生活では左側の突然の障害物に対応できないなど受動的/ボトムアップ注意の障害が観察されます。

 

半側空間無視の神経機構

半側空間無視の病態解釈として想定されているのが受動的注意システムの障害です。

  1. 右腹側注意ネットワーク損傷により、覚醒、注意の持続性、目的とするターゲットやターゲットの再定位(外発的・受動的注意)の低下が発生
  2. 右腹側ー背側注意ネットワークの相互作用の異常(右背側注意の機能低下)
  3. 背側注意ネットワークにおける左右半球の不均衡が発生(左背側注意の過活動)
  4. 右空間への注意バイアスの出現

まとめ

半側空間無視は2つの異なる注意ネットワークが関与している。

トップダウン注意はBITで評価できる。

ボトムアップ注意は日常生活を阻害因子として残存しやすい。

病態解釈のための為のいち仮説として半側空間無視の神経機構を勉強しました。

 

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